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2011/07/01

通常使用する工具


ドライバー
ギターリペアでは必需品 よく使うので良い物を選びましょう。
PBドライバー
これは無いと話しになりません。どこにでも有るメジャーな工具ではありますが、それ故にいい加減な物も大変多いので注意して下さい。
ドライバーの先端(フィリップスリセスと言います)には、大きさによって番号があります。
これはネジの方にも番号があって、大きさが定められているからです。ギターリペアでは+の0番、1番、2番が必要です。
-はビンテージ系のギターの一部パーツやハムバッカーPUのネジ等で使うだけなのでわりと適当でも構いません。
1番か2番が有ればなんとかなると思います。
一カ所だけレスポール等のテールピースのスタッドでものすごく大きいの(5番か6番)を使います。
(これはドライバーじゃなくても良いんですが…)
私は工具フェチなのでPB製を使っていますが、国産のベッセル等でも十分使える物がありますから、グリップ感や先端形状をチェックして選べば良いと思います。

このPB製ドライバーは先端の形状精度が高く、重量バランスも良いため大変使いやすいです。
自動車などで使用する場合は他社にも良い物がありますが、小さなネジの多いギターやアンプ、エフェクターのメンテナンスには、ズバリ「PB」をおすすめします。
このドライバーは軸の硬度は大変高いのですが、粘りがあるため大きな力がかかった場合にかなりしなります。
このしなりを嫌う方(ドライバー軸にレンチをかける様な作業が多い方ですね)が居るのは事実ですが、主にギターで使用する場合、軸にレンチをかけるようなことはあり得ません。
それよりもネジ山をつぶさないとかネジの頭から先端が外れない方が重要です。
PBのドライバーはこのしなりによってネジをなめる瞬間、外れる瞬間がわかります。
+、-のドライバーは20年以上愛用していますが、まったくトラブルはありません。
六角レンチのドライバー型は、ボンダスを使うようになってあまり使わなくなりました。

良い工具は上級者向きと思われがちですが、経験や技術が十分でない場合、工具に助けてもらった方が上達が早く、感覚も磨けます。
工具の中では使用頻度が堅く、比較的安いので、自分でギターのメンテをする方は是非使ってみてください。

先端形状で注意する点

妙にとがっていない事
あまりに角度が付いている物は先端が底付きしてしまい、トルクが掛けられません。
もし自分のドライバーがこのようになっていたら、先端をヤスリで少し削って平らにしてみて下さい。
ネジとのフィット感が良くなるはずです。

先端はメッキ処理されていない事
先端のメッキ処理は精度が悪くなるため、普通は防錆処理だけで、これを行いません。先端が黒くなっているのが未メッキ処理の証拠です。ただし、極希に激安ドライバーで先端を黒く塗っている物がありますので、これにはだまされないようにしましょう。

最近、+のドライバーで複数の番手をカバーするタイプを見かけます。
通常は好ましくないのですが、実はギターに使われているネジの頭側にも好ましくない物が有るため、意外にも具合が良い場合があります。
ギターに使われているネジも基本的には規格に沿っているのですが、中には中途半端なサイズや形状の溝を持つネジがありまして、この手のネジにはフィリップスリセスは通用せず、ジャストフィットするいい加減なドライバーの方が良い場合があります。

六角レンチ
FRTのロック用、フェンダー系弦高調整、ネック調整等で必需、他にも使用する場所がいくつか

ボンダス BONDHUS 六角レンチ アーレンキー
六角レンチはネジ径に対して接触面積が大きく、大きなトルクがかけられるため、多少精度が低くてもギターのリペア程度なら使用可能です。
しかし、大切なギターに使用するなら、良い物を使用するに越したことはありません。
←はボンダス製、比較的低価格で非常に良くできています。
長さと重量のバランス、精度、強度いずれも優秀。長い方は先端がボール形状になっており大変使いやすいです。
工具フェチじゃなくても是非とも使っていただきたい六角レンチです。
弦高調整の小さなネジは精度の低いレンチで回すとなめてしまうことがありますが、こいつなら大丈夫です。

ドライバーの所で出てきたPB製のレンチも精度が高くて良いのですが、コストパフォーマンスはこちらが上です。メッキがない所も男の工具って感じで好感が持てます。
L型の短い方が極端に短いタイプもラインナップされており、ネックのアジャストロッドを回す場合に有効です。
一般的なレンチでは回せない(入らない)ギターも楽勝でいけます。
とにかくこれはWeb店長絶賛、ボンダスを使うと他のレンチは使う気がしなくなります。

ショックレスハンマー
組み込みや調整のために一本は欲しい所
PB ショックレスハンマー
固着したパーツを外したり、スタッドやフレットを打ち込んだり、そう言った用途で使います。
無くてもなんとかなりますが、有れば必ず使います。
一度お世話になれば手放せなくなる工具です。
相手はギターですし、釘打ち用ではありませんので金属製は具合が良くありません。
主に木やナイロン、硬質ゴム、プラスチック等で出来ています。

写真はPB製のナイロン(ポリアミド)ショックレスハンマー。
ハンマー内部に移動するワッシャーが入っていて、反動を吸収します。余分な力が要らず、対象物に確実に打撃が加えられます。

いろいろなショックレスハンマーがありますが、材質ではなく物理的に反動を吸収するPBショックレスハンマーの構造はすばらしく、適度な堅さと滑りを持つポリアミド樹脂は耐久性も抜群です。
20年以上愛用しておりますが、不具合は一切ありません。現在も毎日のように活躍しています。
さらに、美しいヒッコリーの柄とくれば、もうわけのわからんハンマーは絶対に使う気がしなくなります。
少々高価な気もしますが、ギターリペアなら多分一生使えます。

ナット溝用のヤスリ
ナット溝に使用するヤスリ数種           深沢やすり店 オーダー品
ナット溝切りヤスリ 深沢ヤスリ製の特殊なヤスリ
市販の専用品ではなく、汎用の精密ヤスリと目立てヤスリだけ(中央の4本を除く5本)で、全てのギター&ベースのナット溝を切っています。
市販品は幅が固定されていて、ちょうど合っていれば問題ありませんが、ナット形状、溝の深さ、弦の太さが異なる溝には対応できません。
ヤスリの使い方で幅はどうにでもなるので、実際はギターのナットの溝は向かって右から2本目と3本目の二本と目立てヤスリ1本の3本だけで切っています。
これまで3桁では効かない個数のナットを製作してきましたが、使うヤスリはこの3本だけです。
しかし、25年も同じヤスリを使ってきたため、常用していた向かって右側から2本目3本目の2本は全然切れなくなってしまい、別のヤスリである程度深さを出して仕上げの部分にしか使用できなくなってしまいました。
新しいのを買えば良いという話なんですが、最近売っている精密ヤスリは精度が非常に低く(安いですけど)、溝の底の形状を精密に仕上げられないのです。
安い中国製の精密ヤスリは全然精密ではないのです。日本製で比較的評判の良い、魚地球印も取り寄せてみましたがイマイチでした。
そこで、いろいろ調べた結果、ヤスリをオーダーできるところを発見しまして、そこが「深沢やすり店」です。
この深沢やすり店にオーダーしたものが左写真の中央4本、右写真がその拡大です。
変わった形状ですが側面部まで刃が入っており、私のナット製作方法に合わせた形状と刃付けになっています。
本来は1本で4000円ほどになりますが、深沢やすり店ご主人との数回の打ち合わせにより当初一本で複数弦をまかなうという形状から、本来私が希望していた形状に変更してくださったので、大変安価で製作していただける事になったやすりです。
非常に細く、小さなやすりですが、刃や形状の精度の高さはもちろん、やすり職人の魂のようなものを感じる逸品です。
切れは抜群に良く、高い精度を持つこのやすりは、市販品では入手不可能だと思います。深沢やすり店様、素晴らしい道具をありがとうございました。


アマチュアなので値段の高い工具は必要ないという考え方もあるかと思いますが、高い技術や多くの経験を持つプロが良い道具を使っているのに、そうではないアマチュアが安物の工具を使用していては、その差は開く一方です。
工具はなるべく良い物を使用する事が上達の早道であり、失敗を未然に防ぐ事にもつながります。
また、良い道具は壊れる直前のフィードバックがありますので、工具自体が壊れるもしくは対象物が壊れる直前に気が付く事が多いです。
私は最終的に目的が達成されれば工具の方が壊れてしまっても仕方がないと思っておりますが、一般の方の場合これが大事なギターの方だったりしたら悔やみきれないと思います。
精度が低く、誤差の多い安物の工具では、その微妙な感覚が伝わってこないのです。
この微妙な感覚が判断できるかどうかは重要な事で、一流のリペアマンであればまず間違いなく持っております。
究極的な作業を行う場合でも、たとえ工具が壊れても対象物を壊さないためには一流の工具が必要なのです。

仕事でかなり過酷な使い方をしていても良い道具はそう簡単には壊れません。
プロが20年も愛用していてもまったく問題のないレベルの工具は、自分のギターをいじる程度なら一生使用(手入れはしてくださいね)できると思います。
全て揃えるのは大変だと思いますから、必要に応じて少しずつ揃えていくと良いのではないかと思います。

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